東日本大震災から四ヶ月が経ちます。生活は普段通りであるにも関わらず、随分と密度の高い時間を過ごしたような気がします。
三月十一日以前と以降とに分けて、日本の歴史はこれから語り継がれるであろうと言われています。戦前、戦後ならざる、災前、災後と表現している方もおられます。何十万人という方が、家族も、家も、財産も、そして故郷をも根こそぎなくされました。喪失体験という言葉では到底表現しきれない、悲痛極まりない心境に陥り、絶望に打ちのめされておられることと思います。皆さんもテレビや新聞を通じて本当に心を痛めておられることでしょう。福岡県医師会の要請に基づき、当院からも福島県いわき市へ職員四名を派遣する予定でしたが(先方の都合により中止となりました)、被災地の方々のもとに馳せ参じたいという方も多いのではないでしょうか。
先日、日本自動車工業協会の会長で、日産の元CEOの方がテレビに出演しておられました。自動車業界もかつてないほどの窮地に立たされていますが、また、かつてないほどに、一致団結の機運が盛り上がっているそうです。被災前までは、トヨタだとか日産だとか三菱だとかいう線引きがあり、皆が競争相手という関係だったのが、今では、その壁が取り払われて、皆災いを被った者どうしとして頑張ろうという力が漲ってきているとのことです。自動車業界はこの最たる難局を乗り越えることができると信じている、というお話でした。
日本が繋がり始めたのでしょう。それまではてんでんばらばらだった日本という家族が繋がり始めて、家族の成員一人一人がそれぞれの個性を生かし、分を果たせるようになりつつあるのだと思います。繋がるということは分かれることであるという、矛盾する言い方ですが(西田哲学ではこれを「逆対応」と表現します)、繋がれば繋がるほど、そして、信頼関係が増せば増すほどに、一人一人の分や役割が生きてきます。分や役割を果たすことができるということは、逆に絆が強まりゆくことであると思います。そこから本来の力が生じてきます。日本には、能力も、技術も、志も、魂もあります。禍転じて福となす、マイナス札をプラス札に転ずる転換力こそは、日本のお家芸であろうと思います。
復興の道は、本当に茨の道でしょう。それを踏破するには、十年、ひょっとしたら二十年の歳月を要するかもしれません。しかし、日本は必ずやこの国難を乗り越えていくと確信しています。私たちは、自らの分を果たすべく、目の前の課題一つ一つにしっかりと取り組み、必ず甦るという信念をもって、臨んでまいりたいと存じます。
posted by 福岡聖恵病院院長 at 10:01
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